ジャン・エシュノーズ 『ピアノ・ソロ』
2006-11-21読了 ○
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マックスは初老のコンサート・ピアニスト。学生時代に恋した女にいまだ思い焦がれ、鬱病やアルコール中毒に悩まされながらも、成功した暮しを送っていた。ところがある夜、かれは強盗に刺されて死んでしまう。次に目覚めたとき、マックスは奇妙なホテルのような場所にいた。そこへ現れたひとりの男は、ここは死後の運命、つまり天国行きか地獄行きかを決めるまでのトランジット用施設なのだという。
図書館の新着図書棚で、楽しげな挿画に惹かれて借りてきたもの。表紙から想像したよりもずいぶん皮肉な話でしたけれど、すらすら読めておもしろかったです。
わたしの利用している図書館では本の帯やなんかをすべて捨ててしまうので、カバーの見返しに印刷されていたりしない限りあらすじがわからないという難点があります。なのでこの本も、ほとんどなにもわからないまま借りてきたようなものです。マックスが死んでしまったときにはほんとにびっくりした。
長めの訳者あとがきでは、この小説に関する分析がなされています。そのなかでとくになるほどと思ったのが、分身のテーマ。マックスの人生に登場する女たちを筆頭に、この小説は登場人物の役割について非常に意識的だという気がします。
エシュノーズが描写する天国と地獄については、あまり語ってしまうと未読のかたの楽しみを削ぐでしょうから、ユニークで興味深かったとだけ。審判のあとの流れも、妙に現実的でよかったです。
最後の場面が、とてもシニカルで映像的で印象に残っています。それこそフランス映画のようだった。
登場人物では、マックスの付き人ベルニーが好き。垢抜けなくて鈍くさいところがあるけれど誠実な、とてもいいひとなんです。
トランジット中のセンターでマックスの案内役を務める男ベリアールは、なんとなく『コンスタンティン』のバルサザールことギャヴィン・ロズデイルを思い浮かべながら読んでいました。いやみな感じが似合いそうだというだけの理由でしたけれど、前述の訳者あとがきには「ベリアール」と似た音の「ベリアル」という名は聖書における悪魔の同義語と書いてあって、あながちでたらめな想像でもなかったようです。
文体の特徴は、せりふが地の文に溶けこませてあって、かっこでくくられていないこと。
あと章立てが細かいです。四、五ページから、長くても十ページくらい。
エシュノーズはこの『ピアノ・ソロ』の前に発表した作品『ぼくは行くよ』でフランスの高名な文学賞を取ったらしいです。そちらもぜひ読んでみたい。
ジャン・エシュノーズ 『ピアノ・ソロ』
谷昌親(訳)
集英社 2006-10-25 ¥1,900+税
Jean Echenoz Au Piano, 2003 (仏)
2006-11-21読了 ○
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